先物取引、信用取引という用語をニュースや新聞などで見かけたことがある方はいるでしょうか?
聞き慣れていないと難しい用語かもしれませんが、いずれも売買の仕組みのことを指します。
近年では新NISAなどの資産形成も話題に取り上げられ、株式投資や資産運用について取り組む人も増えてきています。
難しくて詳しくわからないという方のために、この記事では両者の違いとメリットデメリットについて解説していきます。
株式投資や資産形成のために知っておいて損はないため、この記事を読んで知識を深めていきましょう。
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先物取引とは将来の売買を約束する取引
先物取引とは、特定の資産・商品を現時点で取り決めた価格で、将来の売買を約束する取引のことをいいます。
取引の時点では、売買の価格や数量のみを決めて、決められた期日に受け渡しをします。
つまり、その時には買い付け代金を支払わず、先伸ばしされた状態の取引となります。
たとえ将来の価格が、約束を取り決めた時点とどれだけ差があったとしても、必ず約束した価格で売買をします。
そして、受け渡しの約束日には、買手が代金を支払い、売手が商品を渡すということになります。
先物取引の仕組みをわかりやすく解説
もう少し噛み砕いて説明していきます。
例えば、「3ヶ月先に、バナナが100円なら10房買いたい」という町の住人Aがいたとします。100円のバナナを10房買うと1,000円必要ですが、3ヶ月後でないと住人Aには1,000円のお給料が入ってきません。
しかし、1,000円が手に入るまで待っていてはその間にバナナは値上がりしてしまうかもしれません。そこで、住人Aは先物取引を利用して、現時点でバナナを10房買うことを約束しました。
もちろん代金の支払いは3ヶ月先まで引き延ばされます。すると3ヶ月後には、100円だったバナナは天候の影響で130円に値上がりしていました。
この時の住人Aの支払いは、約束通りの1,000円となります。
先物取引を利用せずにお給料が入るのを待っていたら、130円×10房で1,300円が必要になるところでした。このように、先物取引を利用すれば決めた価格で取引できるため、高額な支払いをせずに済むというわけです。
先物取引の特徴
先物取引には大きく分けて「商品先物」と「金融先物」の2種類があります。
商品先物 | 原油 金 貴金属 トウモロコシ |
金融先物 | 株式 債券 |
この2種類があることを踏まえて、先物取引の特徴を紹介していきます。
取引には証拠金が必要
先物取引では、取引時点では取引金額全額を用意する必要はありません。
代わりに証拠金と呼ばれる担保を差し入れて取引を行います。
万が一返済するお金を用意できなかった時に、代わりに渡すもの。
反対売買による差金決済ができる
反対売買とは、決まった日に仮に商品購入の約束をしていたとしたら、それまで約束した取引と反対の取引(売却)を行うことを指します。
差金決済では、反対売買によって生じた「約束した時の価格」と「決済時点での価格」の差額だけを受け渡します。
直接の、現物の受け渡しは行われません。
例えば先ほどの例でいうと、住人Aが1,000円で買ったバナナを住人Bに1週間後に1,200円で売る約束をしたとします。
1週間後、バナナが1,100円になっていた場合、住人Aは住人Bから100円の利益を得たことになります。
逆に、バナナが1,300円に値上がりしていた場合、住人Bに100円を支払うことになるわけです。通常であれば、住人Aは1,200円を住人Bに支払う必要がありますが今回の場合、差金決済を利用すると、100円あれば取引可能となります。
夜でも取引できる
株の取引が行われるのは、通常午前9:00から午後3:00までです。
この時間帯は、日中に仕事をしている人にとっては忙しく都合の悪い時間帯なのですが、先物取引では夜間取引も可能です。
午前8:45から午後3:15までと午後6:30から翌日午前6:00までの2つの時間帯で取引できます。
そのため、仕事を終えた時間帯からでも自分のタイミングで取引が行えます。
先物取引のメリット
短期間で利益を得られる
先物取引を始める際には、総取引額の5〜10%が準備できれば問題ありません。
つまり、10,000〜20,000円の大きな取引を行うための資金が、1,000円でも可能な場合があるということです。
取引をした際にも、価格は変わるため大きな利益を生み出せる可能性があるのです。
また、前に述べた通り、先物取引では取引の期間が決まっています。
特にガソリンや原油などの商品先物では、短期間でも価格が大きく変わるため、利益を得やすい傾向にあります。
価格が変わりやすいのは、原油はほとんどを輸入に頼っていることから、そもそもの原油の価格や海外から運んでくる輸送費などに影響を受けやすいからです。
先物取引のデメリット
追加の証拠金を差し入れる場合がある
先物取引は株式取引などと同様に、投資資金に対する元本の保証はありません。
つまり、自分が準備した資金以上に損をする可能性があるということです。
資金として、1万円の証拠金で、ボーナスが入る1ヶ月後に20万円のジュエリーを購入する約束をしたとします。
しかし、1ヶ月後にそのジュエリー会社の不祥事で、ジュエリーの価値が1,000円まで下がったとします。そのような場合でも、1,000円で手に入るジュエリーを約束通り20万円で購入しなければなりません。
先物取引では、このように大きな損失が出る可能性を理解しておく必要があります。
また、取引期間中に、想定していない大きな値動きがあった場合、追加で証拠金を差し入れる必要があります。
仮に、貯金が10万円しかないのに10万円で取引をしていると、追加で5万円が証拠金として必要になった場合に対応できないため、余裕をもった取引を行いましょう。
信用取引とは証券会社から借りた資金で行う取引
信用取引とは、自分を信用してもらい持っている資金以上に株式投資を行える、株式売買の方法のうちの1つです。
すなわち、手持ちの資金や株式などを証券会社に預けることと引き換えにお金や株券を借りて、株式投資するということになります。
株式投資は、資金が多いほど多くの株を扱えるため有利といわれます。
しかし、初めから資金を持っている人は少ないため、手持ちの資金を活用して利益を得たいという場合に利用できる取引です。
信用取引の仕組みをわかりやすく解説
信用取引がまだ理解できないという方に、噛み砕いて解説していきます。
ですが、住人Aには全く資金が残っていません。そのような場合に、別のお店Bで現在自分が持っているバナナ1万円分と引き換えに、お店Bから資金を借りて新たに高級バナナを手に入れました。
このように、資金がない場合でもお金やモノ(株式)を借りることで自分の希望する取引が行える仕組みのことを信用取引といいます。
信用取引の特徴
信用取引には、買付けのために資金を証券会社から借りて株式を買う「信用買い」と、売付けのために株式を証券会社から借りて株式を売る「信用売り(空売り)」の2種類があります。
信用買いの仕組み
信用買いとは、株式購入の際の資金が足りない場合に、証券会社に担保として現金を預けることで株式購入代金を貸してもらう方法です。
その漫画が3ヶ月後に爆発的な人気を誇り30巻で10万円に値上がりしていた場合、その時点で漫画を売ると10万円が手に入り、7万円の利益を得られたことになります。
その後は、得た利益か手持ちの資金で証券会社に返済することになります。
信用売り(空売り)の仕組み
信用売り(空売り)とは、証券会社から株券を借りて取引することをいいます。
つまり、自身のお金を預けて、万が一損をして返済ができなくなった時にはそのお金をもって返済完了とする前提で、株券を借りるということです。
そうすることで、手元に株を持っていなくても、株券を借りて先に売ることから始められるのです。
借りた株券は期日までに返却しなければならないため、それまでに買い戻します。
Aは50万円を手に入れられましたが、その漫画は予想通り値下がりを続け、50巻10万円まで下がってしまいました。Aはそのタイミングで、再度50巻を10万円で購入し返却します。その場合、資金50万円で10万円の50巻を手に入れたため、40万円の利益を得たということになりますね。
信用取引のメリット
株価が下がっている時も利益を出せる
信用取引では、証券会社に預けたお金の最大約3.3倍まで取引できます。
つまり、少ない資金で大きな取引が可能というわけです。
一般的に、100株で300万円の株式を買うには、300万円が必要です。
しかし、信用取引を利用すれば100万円を証券会社に預けるだけで、この300万円の株式を購入できるのです。
また、株式投資は、株を購入することから始める場合がほとんどです。
しかし、信用取引では、今後下がりそうだというタイミングで株を売り、予想通りに株価が下がった時に買うことで、よりお得に取引できるのです。
信用取引のデメリット
金利などの費用がかかる
前述の通り、信用取引では、証券会社に預ける金額の約3.3倍の金額まで取引できるため、大きな利益が得られる反面、大きな損失に繋がる場合もあります。
仮にそのジュエリーが30万円に値下がりしたとしたら、270万円損することになり、本来持っていた100万円以上に損失が出るというわけです。
また信用取引は、預けたお金を元に資金や株券を借りるため、借りている間には金利がかかります。
利息(お金を銀行へ預ける際にもらえるお礼金)や、利子(お金を銀行から借りる際に支払うお礼金)を計算する際に使用する利率のこと。
仮に、金利が0.002%だとすると、証券会社から100万円借りた場合には、返す金額は100万円に2,000円をプラスした金額を支払う必要があるわけです。
そのため、お金を借りる際には金利はできるだけないほうがいいのです。
先物取引と信用取引の違いとは
先物取引と信用取引は、どちらも証拠金や株式などと引き換えに取引をするという点では同じように見えますが、この2つは根本的に異なる取引です。
以下、2点に絞って説明します。
1点目は、「借りる」「貸す」の行為の有無についてです。
信用取引では、株式取引を行うためには、証券会社から資金や株券を借りる必要があります。
しかし、先物取引では信用取引のように「借りる」「貸す」という行為はなく、あくまで自身の資金内でやりとりします。
資金の決済が先に伸びているだけなのです。
2点目は、金利などの費用についてです。
信用取引は、預けたお金を元に現金や株式を借りているため、金利などの費用が必要ですが、先物取引では貸し借りは行っていないため、金利などの費用は必要ありません。
両者の違いを理解して、混同しないようにしましょう。
先物取引を始めるのがおすすめな人
決断力がある人
資金に余裕のある人
先物取引は、少ない金額で大きな取引ができるため、大きな利益を得たい人におすすめです。
また、値動きがあった時に、「今だ!」と売買の決断ができる人は向いているでしょう。
特に、資金以上に損しても問題ないほどに経済的に余裕がある人であれば、落ち着いて取引の判断ができるはずです。
信用取引を始めるのがおすすめな人
リスク管理ができる人
分析が得意な人
信用取引には、これまでに述べたように金利などの手数料がかかったり、取引期限が決まっています。
そのため、短期間で利益を大きくしたいという方に向いています。
さらに、短期間で利益を上げるためには、失敗もしながら自身で値動きを予測するなどの分析を行う必要があります。
そのため、初心者の方からすると少しハードルの高い取引方法であるといえるでしょう。
まとめ
今回の記事では、先物取引と信用取引の違いについて解説しました。
株式投資と一言にいっても、取引方法には様々な方法があります。
一言で分かりやすくまとめると
・信用取引は、証券会社からお金または株式を借りて取引を行う
となります。
どちらも、大きな利益を生み出せる反面、自己資金よりもマイナスを出していますリスクはあります。
特に、株式売買にはお金が絡むことであるため、とりあえずやってみよう!と初めてしまっては、損する結果にもなりかねません。
まずは知識をつけて、自分なりに善悪の判断ができるようになってから始めることをおすすめしますよ。